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認知症の薬は飲んだほうがいい? 症状の進行を遅らせる薬物療法について専門家からのアドバイス

2022.05.13

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認知症が治るわけではありませんが、薬で暮らしづらさが減るのはご本人の支えになります。また、薬を飲めなくなってもそれで終わりではありません。薬物療法はサポートの一つであり、ほかにもいろいろな方法があります。──洋さん


使用する薬剤は、重症度を基本に薬剤の特徴を踏まえたうえで、本人の状態、生活・介護状況なども考慮しながら選択されます。例えば、認知症の自覚がない人に錠剤を継続して飲んでもらうのはとても難しいことですが、貼り薬のリバスチグミンなら患者さんとご家族の服薬の負担を軽減できる可能性があります。

また、薬物療法を継続するうえで生活に支障をきたすような副作用がないことが前提です。薬を減量したり副作用対策を行ったりしても副作用がつらい場合は使用を中止することがあります。一方で薬が飲めなくなってもそれで終わりではありません。薬物療法はサポートの一つであり、認知症の暮らしづらさを軽減する方法はほかにもいろいろあります。

アルツハイマー型認知症の症状には中核症状に伴って出現する行動心理症状(抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想、せん妄など)もみられます。これらの治療には心理的アプローチによる治療効果を期待して行われる非薬物療法が優先されます。


非薬物療法で行動心理症状が治まらないことも少なくないため、ご家族の中には「私の対応が悪いせいだ」と自分を責め、精神的にしんどくなる人もしばしば見受けられます。漢方薬の抑肝散(よくかんさん)や向精神薬が効くこともあるので、主治医とよく相談して薬剤を使ってみるのもよいでしょう。いずれにせよ、認知症の介護では頑張りすぎないことが大切です。

薬物療法を通して主治医とともに考える関係性を築く


認知症の進行を遅らせたり症状を落ち着かせたりするのに薬だけを飲んでいればいいというものではありませんが、前向きに薬物療法に取り組んでいる患者さんやご家族は日頃から生活リズムを整えたり、定期受診を欠かさなかったりと体調管理を心がけ、デイケアなどの介護サービスも積極的に利用して暮らしづらさを減らしているように感じます。

米国に留学し脳波診断の研究をしていた頃の和夫さん

1950年代後半、米国に留学し脳波診断の研究をしていた頃の和夫さん。帰国後、東京慈恵会医科大学で新福尚武教授のもと認知症スケールの開発に取り組んだ。写真提供/長谷川 洋さん

高齢者の場合は薬を上手に使えば天寿をまっとうするまで認知症の進行を遅らせて「悪くなるのはあの世に行ってから」ということも期待できます。──和夫さん


父はドネペジル塩酸塩が開発されたとき、「症状の進行を抑制する効果しかないけれど、この薬が登場した意味はとても大きい」と語り、患者さんやご家族に「症状を抑えることができますからやってみましょう」といえるようになったことをとても喜んでいました。

それまでアルツハイマー型認知症に有効な薬はなく、医師としての無力感を嫌というほど味わってきた父は、治療手段を持ち一緒に対処法を考えてこそ医師の本分が果たせると強く思っていたようです。患者さんやご家族にとっても治療手段があることは生きる希望につながります。

そして、父がいうように薬物療法を通して患者さんとご家族、主治医がともに認知症に向き合い、対処法を考える関係性を築けることが何よりも大きなメリットなのかもしれません。
撮影/八田政玄 取材・文/渡辺千鶴

『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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