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誰もがたて笛を吹ける国、日本の音楽教育は進んでいる。佐渡裕と反田恭平が語る音楽の明日

2022.05.12

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音楽の贈り物 第2回(全3回) 2023年4月、東京・墨田区のすみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任する指揮者の佐渡 裕さん。そしてショパン国際ピアノコンクール第2位入賞で日本中を沸かせ、自らのオーケストラも率いるピアニストの反田恭平さん。今注目のお二人に、新たなステップへの意気込みと音楽が開く未来の可能性について語っていただきました。前回の記事はこちら>>

音楽環境が整っている日本。その環境をもっと生かして


佐渡さん

佐渡 裕(さど・ゆたか)
1961年、京都市生まれ。レナード・バーンスタイン、小澤征爾に師事。1989年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。以後、世界各地のオーケストラに客演。現在はトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督としてウィーンを拠点に活動。国内では兵庫県立芸術文化センター音楽監督、シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者。2023年4月に新日本フィルの音楽監督に就任する。

誰もがたて笛を吹ける国。日本の音楽教育は世界でも進んでいる



佐渡 日本の音楽教育はすごく進んでいると思う。音楽の授業で全員にたて笛をやらせて、みんなが吹けるなんて日本以外ないよ(笑)。兵庫で「たて笛の会」というイベントをやったのだけれど、入場料500円で1日2回の公演が超満員。初・中・上級者向けに楽譜を事前に配っておいて本番はみんなで合奏したけれど、すごく盛り上がった。そんなことができるのはやっぱり日本だけですね。

僕が育った京都市は、子どもの音楽教室や少年合唱団、音楽高校や音楽大学がすべて市立で揃っていて、コンサートホールやプロのオーケストラまで持っている。しかも世界に誇れるこういった環境を戦後すぐに作り始めている。自治体がここまでコンサートホールを所有している国は世界でもなかなかない。一方で、それを今各地で生かせているかというと、そうは思えないんです。

反田さん

反田恭平(そりた・きょうへい)
1994年、札幌市生まれ。高校在学中、日本音楽コンクールに史上最年少で優勝。モスクワ音楽院を経て、現在ショパン国立音楽大学研究科に在籍。同世代の音楽家を集めたジャパン・ナショナル・オーケストラを創設し、自らが社長を務め、奈良を拠点に活動。2021年ショパン国際ピアノコンクールで第2位入賞。最もチケットの取れないピアニストとしても知られる。

反田 僕は、まだまだ自身も勉強している段階です。だからこそできることがあると思っています。たとえば、年の近いこれからの子どもたち、世界に出ていきたいという志を持った子たち、プロを目指す子たちに、日本でよい環境を整えるということも考えています。そもそも日本の音楽高校、大学は練習場が整備されていてとてもきれいですよね。ペダルがついてるピアノがあって、鍵盤もちゃんと白黒。それが海外だと全然違う。

ロシアに留学したときには練習室を探すのが大変でしたし、そもそもまともなピアノが一台もない。音楽学校なのに......。先日イスラエルで「楽屋のピアノです。どうぞ」っていわれたのは、もう戦前のみたいなピアノなんです。鍵盤を押すと埃が舞って、くしゃみが止まらなくなって。でもそういう環境で世界の子どもたちは弾いたり学んだりしているわけですから、いってしまえば、日本は環境が整いすぎて甘えているのかもしれないですね。

佐渡 音楽環境は整っているのだから、オーケストラと街が協力すれば、本当に人の心に残るものを作れるんじゃないかと思うんだ。その先頭に立つためには地域の皆さんに僕自身のこともこれから知ってもらわなきゃいけないし、実際にはホールに足を運ぶのが難しい人たちにも、この劇場を街の誇りに思ってもらえるようにしていかないとね。
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