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ジュエリーの歴史は巡る。ルネ・ラリックのペンダントから見えるジュエリーの価値

2022.04.22

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「ジュエリーの真髄」を知る 第5回(全14回) 美術館や博物館で観るような歴史的な芸術品から、日々を彩る日常使いの輝きまで……。美しいジュエリーには、夢や希望を与え、人々の心を潤す圧倒的な力があります。学び、愛で、そして楽しむ。ジュエリーの真髄を知れば、私たちの人生はもっと心豊かなものになることでしょう。まずはアルビオンアートが集めた名品コレクションからお目にかけます。前回の記事はこちら>>

アルビオンアート ── ジュエリーの歴史は巡る


山口 遼(宝石史研究家)

歴史は繰り返すという言葉があるが、ジュエリーの歴史はまさに繰り返しの連続である。太古、人間の間に階級というものが存在しない頃から、人類はジュエリーを使ってきた。もちろん、今のような宝石だけではなく、美しい花、植物の種、鳥の羽根、動物の牙といった素材ではあったが、ほとんどすべての祖先はそれぞれに身を飾ってきた。

社会に階層が生まれ、王様、貴族、宗教者といった支配階級が生まれてくるにつれて、金銀や天然の宝石などを使った、今日のジュエリーに近いものが誕生し、彼らを飾る一種の荘厳具としてのジュエリーが生まれた。そうした荘厳具としてのジュエリーがピークに達するのは、ルネッサンスから産業革命が始まる300〜400年間のことである。


この頃に作られ、今に残る名作を見て感じるのは、使われている素材の見事さである。希少なダイヤモンドはもちろんのこと、世界の各地から出現してきた色石の質の高さは、数は非常に少ないとはいえ、今日ではほとんど見られないものだ。

下写真のリングは、おそらく昔にビルマの王室から欧州に流れたものだろうが、非加熱で8カラットを超えるビルマ産ルビーは今日ではまったく採れないし、商品としても存在しない。

イタリア王妃マリア・ジョゼ旧蔵 ロイヤル・ルビー・リング

イタリア王妃マリア・ジョゼ旧蔵 ロイヤル・ルビー・リング
統一イタリア最後の王妃マリア・ジョゼ旧蔵の歴史的作品。5ctを超えるビルマ産ルビーは極めて稀。ピジョンブラッドの美しさに圧倒される。(1870年頃、ルビー8.5ct、ダイヤモンド、ゴールド、シルバー)/個人蔵


18世紀末の英国から始まった産業革命で、人間社会に起きた最大の変化は、平民が富裕になれる時代が来たということだ。蒸気機関を利用した製造業、銀行、船会社、旅行会社、貿易商など、これまでに存在しなかった新しい企業が生まれ、その多くは平民の手によるものであった。

富裕になった人間がやることは、今も昔もあまり変わらない。家族のために、自分のために、いろいろなものを買う。その買い物の一つがジュエリーであった。ここに今までにないジュエリー市場が生まれ、これまで王侯貴族を飾ったものとは違うジュエリーが誕生した。単価は低くとも、数としては巨大な新市場である。

そしてその後の第一次世界大戦で男性が多く戦死したために、女性が本格的に社会に出る時代が生まれ、そこでも自分のお金を使って自分でジュエリーを買うというさらに新しい市場が加わってゆく。まさに、原始時代と同じく、誰もがジュエリーを使う時代に戻ったのだ。

新しい大衆市場ともいうべきジュエリー界での最大の変化は、デザインの重視である。19世紀末を挟んで生まれたアール・ヌーヴォー、アール・デコの動きから始まり、デザインや作りを見所としたジュエリーが中心となっていく。ルネ・ラリックが作った冬景色をデザインしたペンダントを見てもらいたい。

ルネ・ラリック 冬景色のペンダント

ルネ・ラリック 冬景色のペンダント
作者の別荘があるパリ郊外クレールフォンテーヌの風景を表現し、1900年のパリ万博で絶賛された作品。アール・ヌーヴォーを代表するジュエリーとして名高い。(1898年、エナメル、ガラス、パール、ゴールド)/個人蔵


雪の積もった林を描いた実に美しい作品だが、使われている素材で金銭的な価値があるのは金と小さな真珠だけ。他はすべてエナメルとペーストというガラスに過ぎない。しかし美しさという面では、ただ宝石を並べたものよりもはるかに印象的で、価値あるジュエリーとして今に残っている。

こうした従来からの素材に加えて、デザインと技術を重視したジュエリーの流れは、欧米のグランメゾンを中心として、21世紀の世界のジュエリー界の主流となっている。これと並行して、ジュエリーの大衆化という2つの流れが存在するのが現代なのだ。

歴史は繰り返す。現代のジュエリーがこれからどう変化してゆくのか、未来にどんな文化を残すのか、楽しみにしたい。
「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」で至高の輝きを間近に
現在開催中の「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」では、アルビオンアートのジュエリーコレクション約60点が展示されています。貴重なミュージアムピースの圧倒的な煌めきを間近に感じられる、またとない機会です。 日程:~2022年6月19日(日) 場所:国立科学博物館 東京都台東区上野公園7-20 時間:9時~17時(入場は16時30分まで) 休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜休館。ただし、5月2日、6月13日は開館) 入場料:2000円(一般・大学生) 600円(小・中・高校生) お問い合わせ:TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル) URL:https://www.kahaku.go.jp/
『決定版 アンカットダイヤモンド』『指輪が語る宝石歴史図鑑』左『指輪が語る宝石歴史図鑑』(3080円) 右『決定版 アンカットダイヤモンド』(4400円)/ともに世界文化社刊 この特別展で展示されているダイヤモンドの原石や、指輪についてまとめた、諏訪恭一氏の本が、絶賛発売中です。
撮影/栗本 光

『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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