エンターテインメント

松山ケンイチさんが、舞台『hana-1970、コザが燃えた日-』を通して伝えたいこと

2022.01.27

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『hana-1970、コザが燃えた日-』

松山ケンイチさん

衣装協力:スーツ/GOTAIRIKU(オンワード樫山 お客様相談室)

一人の人物の生涯を演じるかけがえのない経験


“変幻自在”といっても過言ではないほど多様な役になりきり、「カメレオン俳優」と称される松山ケンイチさん。漫画原作の実写映画など、数多くの映像作品でイメージを固定させることなく、さまざまな人物像を表現してきた。


さらに2012年に放映されたNHK大河ドラマ『平清盛』では、俳優にとって最高のステイタスともいえる主演に抜擢され、その演技力は高く評価された。

「大河ドラマでは一年以上にわたって、一人の人物の若いときから死ぬまでの生涯を演じるという経験をしましたが、それにはすごく悩みました。役者にとってなかなかない機会だったと思います。当時の僕は27歳でしたが、物語が進むと自分の実際の年齢よりも演じている役が年上になっていって、ますますわからなくなっていく。そんな苦しさはありましたが、得たものも多いと思います」

「寄せ集めの家族だけれど幸せに暮らしていたことを作品を通して伝えたいです」── 松山ケンイチさん


今回、松山さんが演じるのは、沖縄の方言でやくざを意味する“アシバー”になって家族を遠ざけていたハルオ。

時は1970年12月20日未明、コザ市(現在の沖縄市)で実際に起きた事件を題材に、久しぶりに揃った血のつながらない家族が過ごした一夜が描かれている。

「僕自身、コザ騒動についてよく知らなかったので、脚本を読み終わった後、すごく心に響くものがありました。60年代の後半から70年代の前半は、僕にとってとても興味深い時代です。当時は学生運動が盛んで、若い人たちがデモなどを通して社会と向き合おうとしていて熱い何かがあったような気がするんです。それは80年代に生まれた僕にはない感覚でした。なぜそこまでみんなが動いたのかを、ずっと知りたかったのですが、返還前の沖縄にも共通するところがあったんだなと興味深く読ませていただきました」

時代背景を理解することは役作りにも生かされる。松山さんは、ハルオをどのように捉えているのだろうか?

「ハルオは自分の本当の名前も年齢も、親が誰なのかも、自分がどこで生まれたかもわからないアイデンティティというものが全くない人物です。だから基本的には差別的で閉鎖的。日本人だという気持ちもあるけれど、全部を拒否しているようにも思いました。でも苦しい部分ばかりではなくて、血のつながりがなくても、隣にその人が生きていたから生きてこられたんだという心のよりどころとして家族を見ている、そんな純粋さを感じてもらいたいです」
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