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イギリス伝統の一生もの。スリップウェア復活の第一人者クライヴ・ボウエンさんの器

2022.01.26

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スリップウェア、英国こころの焼物


文/横堀 聡

私が最初にスリップウェアに出合ったのは2008年「クライヴ・ボウエン 英国の温もりスリップウエアーの世界」展を開催した時です。スリップウェアは知識としてありましたが、実物に触れるのは初めてでした。

その後、英国南西部のデボン州にあるクライヴの家を訪ねる機会がありました。スリップのタイルが貼られたダイニングキッチンで、彼の器に盛り付けられた奥様のロジーの手作りのディナーをお腹一杯ご馳走になり、ご自宅に泊めていただきました。


クライヴさんの工房兼ご自宅クライヴ・ボウエンさんの工房兼ご自宅。(撮影/坂田和人)

クライヴ・ボウエンさんのご自宅築150年の農家だった建物がクライヴさんのご自宅。キッチンには、黄色や緑、茶色のタイルが貼られ、自作のスリップウェアが日常の器として使われている。(撮影/横堀 聡)

料理はクライヴ家にとって特別なものではなく、普段の料理で、前菜、主菜が出された後、手作りのケーキとコーヒーで締めくくられました。

デボンの赤土を低火度で焼き上げた軟質陶器のスリップウェアは、釉薬のとろけるような風合いがあり、料理の柔らかさや温もりと絶妙にマッチして、それはとても綺麗な景色のディナーでした。

数年後、ふたたび訪問した時もその心地よさは変わりませんでした。ロジーの心遣いとスリップウェアによるものでしょう。私はこの目にも心にも優しい軟質陶器に憧れて、クライヴにお皿を6枚注文して帰国しました。手作りで薪窯焼成のお皿は届くまでには随分と時間がかかりましたが、我が家では6枚のスリップの皿が食卓を飾っています。

クライ ヴ・ボウエンさんの食卓クライヴさんの食卓。(撮影/坂田和人)

今では四角い皿や取っ手付き小鉢なども増え、相変わらず器に盛った野菜や料理がとても美味しそうに見えます。クライヴ夫妻も日本に来た時には我が家に寄り、何度か夕食を共にしました。そんな時にクライヴの皿は大活躍したものです。

グローバル化が進んで、日本の生活スタイルも多様になってきました。マンションの真っ白な壁の空間には時としてルーシー・リーのような器が、あるいは無垢の木製テーブルのある家には、英国に起源をもつスリップウェアがしっくりと収まることを私たちは認識し始めているのかもしれません。

つまり本当の意味で私たち日本人の生活が成熟してきた結果、生活の中にスリップウエアが映える場面が生まれ、軟質陶器の魅力に注目が集まっているような気がします。

2018年「英国ラブリィ~派」という企画展を開催するために、イギリスのスリップウェア作家をレンタカーで訪ね回った時に出合った、陶芸家フィリップ・ウッドの印象的な言葉を思い出します。

「以前はストーンウエア(石のように硬い陶器)を作っていたのですが、ある時、自分のアイデンティテイが英国人であることに気付いて、現在のスリップウエアを作陶するようになりました」

私は日本への帰路、飛行機の中で「スリップウェアは英国こころの焼物だ」と呟いていました。

横堀 聡
1956年栃木県生まれ。1996年から陶芸メッセ(現在の益子陶芸美術館)に勤務。学芸員として企画した展覧会に、2003年「英国セントアイヴスへ 東と西」、2005年「沖縄と濱田庄司」、2018年「英国ラブリィ~派展」、2020年「英国で始まり」などがある。

掲載商品を家庭画報.comで販売いたします

本特集の掲載作品(各説明文で★印がついているもの)を中心に、ギャラリー・セントアイヴス(東京都世田谷区)で取り扱いのスリップウェアを家庭画報.comにて期間限定・数量限定で販売いたします。

購入のご案内

販売期間:2022年1月28日(金)18時 ~ 3月31日(木)17時
商品の詳細・購入はこちら:https://www.kateigaho.com/tags/202202pottery/
※販売開始日時より、上記リンク先に販売用の記事が公開・表示されます


*ご購入にあたり家庭画報.com 会員登録(無料)が必要です。
*ご購入は先着順となります。申し込み締め切り日までに完売になる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
*電話による予約やお問い合わせはお受けしておりません。
*商品は原則ギャラリー・セントアイヴスより直送いたします。なお送料は別途、購入者さまのご負担になります。
*お申し込みからお届けまでに、約3週間いただきます。





ギャラリー・セントアイヴス
ギャラリー・セントアイヴス

開業21年を迎えた2021年11月にリニューアルオープンし、より多くの作品と出会えるようになった現代英国陶芸専門ギャラリー。今回ご紹介した作家のものをはじめ、店主の井坂浩一郎さんが現地の窯を巡って親交を深めてきた約30名の英国陶芸家作品を、常設展や年約5回の企画展で紹介している。

ギャラリー・セントアイヴス

東京都世田谷区深沢3-5-13
TEL:03(3705)3050
営業時間:12時〜18時
定休日:月曜・火曜・水曜定休(企画展会期中の休みはホームページ https://www.gallery-st-ives.co.jp/にてお知らせ)、不定休あり
表示価格はすべて税込みです。
スタイリング・フードコーディネート/梶井明美 取材・文/鈴木博美 撮影・取材協力/井坂浩一郎(ギャラリー・セントアイヴス)

『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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