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圧倒的に女性に多い「甲状腺機能低下症」。発症してしまったらどう付き合う?

2021.12.28

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専門医に聞く 今、気をつけたい病気 第1回(02) だるい、寒い、眠いといったエネルギー不足のような症状が出るけれど、自分では見つけられない甲状腺機能低下症。一因となる橋本病は軽症例を含めて成人女性の30人に1人といわれます。意外に身近なこの病気について知っておきましょう。前回の記事はこちら>>
〔解説してくださるかた〕
野口病院 院長
村上 司(むらかみ・つかさ)先生

●前回の記事
だるい、寒い、眠い…「甲状腺機能低下症」でもたらされる症状とは?>>

問診、甲状腺の触診、血液検査が診断に不可欠


甲状腺機能低下症かどうかは、症状を聞く問診、甲状腺の触診、血液検査などから診断されます。甲状腺の触診では、甲状腺の動き方、腫れや結節、圧痛の有無が調べられます。

特に重要なのが甲状腺ホルモンの量を調べる血液検査です。

甲状腺ホルモンには4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)があります。

いずれも血液中ではそのほとんどがたんぱく質と結合していますが、微量に存在するたんぱく質と結合していないフリーの(遊離した)T3とT4を測ります。

なかでも遊離T4は機能低下が起こり始めた初期から下がることがわかっており、必ず測定される項目です。

また、脳の下垂体から分泌され、甲状腺を刺激するホルモン(甲状腺刺激ホルモン:TSH)も測定されます。通常は甲状腺ホルモンが減るとTSHの値が上がります。



甲状腺ホルモン放出の調節機構


甲状腺ホルモン放出の調節機構

血液中の甲状腺ホルモンの量は脳の視床下部や下垂体が常にモニターしている。量が少なくなると、視床下部から下垂体に向けて甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが放出され、さらに下垂体から甲状腺に向けて甲状腺刺激ホルモンが放出される。それを受けて、甲状腺が甲状腺ホルモンを分泌する。甲状腺ホルモンの量が多くなると視床下部や下垂体はホルモンの放出を止める。



自己免疫によって甲状腺が壊れる
女性に起こりやすい橋本病が主な原因


甲状腺機能低下症になる原因として、最も多いのは橋本病(慢性甲状腺炎)です。この病気を初めて論文で報告した日本人の橋本 策(はかる)博士の名前から名づけられ、世界中でこの名前で呼ばれています。

「橋本病の患者さんは女性が男性の20倍以上います。有病率は軽症例を含めると成人女性30人に1人といわれています」。

橋本病は自己免疫疾患の一種で、自分のリンパ球が甲状腺を攻撃することで慢性的な炎症が起こり、甲状腺のホルモンを分泌する細胞(濾胞/ろほう)が壊れ、数がだんだん減って、甲状腺ホルモンの分泌量が低下していきます。

「遺伝的な素因がありますが、自己免疫が起こる詳しい原因はわかっていません。慢性の甲状腺炎があって橋本病と診断されていても、組織の破壊が起こらないため、甲状腺ホルモンの量がそれほど減らず、治療を必要としない人もいます」。

また、甲状腺機能が亢進するバセドウ病で甲状腺を切除したり、放射性ヨウ素(アイソトープ)治療を受けたりしたときに、後になって甲状腺機能低下症になることもあります。甲状腺腫瘍でも同様です。

まれに、甲状腺ホルモンの濃度をコントロールしている脳の下垂体や視床下部の病気が原因になることもあります。その場合は、下垂体から分泌されるTSHの血液中の量が減っており、脳の画像検査などを受けることで診断がつきます。

大量に昆布などを食べてヨウ素を摂りすぎた場合にも甲状腺機能が低下することはありますが、あまり起こりません。

「その場合は摂取をやめれば回復します。私自身は機能低下症のすべての患者さんにヨウ素摂取を制限するようには伝えていません」と村上先生。
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