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15分蒸してから10分炊く。かぶをおいしくするレシピをマスターしましょう

2021.11.06

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

かぶの煮もの


かぶの煮もの

今日はかぶのおいしい炊き方です。かぶと大根はなんとなく似ているので同様の下処理、炊き方でよいと思っていないでしょうか? プロでも大根と同じように調理する人が多いのですが、かぶの調理法は大根とは異なります。

品種や鮮度にもよりますが、概してかぶは大根に比べてマイルドで、辛みが少なく柔らかで上品な甘さを持っています。かぶの可食部分は大根と違って根ではなく、そのほとんどが胚軸(はいじく)と呼ばれるところで、畑で育つときも土の上に出ています。


一方、大根の可食部分は大部分が根で、土の中にぐいぐい入り込んで育っていくため、皮や細胞壁も厚くなります。地中で雑菌などから身を守るため、強い酵素が厚い皮の部分に多く存在し、それが辛みや臭みの元になっているのは「焼きのこの柚子おろし和え」で述べたとおりです。かぶは土の上で育つので、大根ほど育つ上での苦労がなく、細胞壁も皮も薄いのです。ゆえに柔らかく、その分すぐに煮くずれてしまいます。

かぶの煮もの

かぶをまず生のまま食べてみて、その持ち味と苦みや辛みの度合いを確認し、下処理の方法を決めます。新鮮で上質なものであれば、茹でずに蒸すだけで十分な場合も多いです。かぶは炊きたてがおいしく、朝仕込んで味を含ませると、夕方には煮汁にかぶの風味や甘みが溶け出してしまい、味は染みていますが、見方を変えれば抜け殻となっています。

ましてや下の写真のように菊に見立てて細工などすると、火の入り具合で包丁目がつぶれてしまうため柔らかくおいしく炊けません。

かぶの煮もの

今回は同じ菊でも琳派に見られる古典模様の饅頭菊(万寿菊)のように丸くむき、菊を含む五花蒔絵(ごかまきえ)の大平椀に盛りました。柔らかく蒸して炊くだけなら、家庭でもおいしくできますね。かぶを炊くコツを実践して野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「かぶの煮もの」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

煮ものの場合はかぶの皮を厚めにむく。皮の下には堅い繊維があり、舌触りが悪く苦みが残る場合がある。

・調味料の量は、蒸して柔らかくなったかぶの甘みに応じて加減する。

蒸したてのかぶを沸く寸前の熱い出汁に移して炊く。蒸して柔らかくなったかぶを冷たい出汁から炊くと、沸くまでの間にかぶの表面だけでなく内部の温度も下がる。再び加熱する過程でかぶの組織が再膨張し、煮くずれしやすくなる。

油揚げ1/2枚を開いて落とし蓋代わりにして炊くと、油分が加わりおいしくなる。







「かぶの煮もの」


かぶの煮もの

【材料(2〜3人分)】
・かぶ(中。葉付きのもの) 5個

・かぶの煮汁
出汁750cc (かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい)、塩1.5g、 日本酒大さじ2、薄口醤油大さじ1、みりん大さじ1、油揚げ1/2枚

・かぶの葉(茹でたもの) 45g

・かぶの葉のきんぴら用調味料
ごま油小さじ2、日本酒小さじ1、薄口醤油小さじ1、きび砂糖小さじ2、一味唐辛子少々

・食用菊(黄色) 1輪

・土佐酢
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合

【作り方】
1.かぶは実と葉を切り分ける。実の皮をりんごの皮をむく要領で厚くむく。かぶを沸いた蒸し器に入れ、柔らかくなるまで15分ほど蒸す。

2.鍋に出汁を入れ火にかけて沸きそうになったら火を弱め、調味料を入れて好みの味にととのえる。蒸したてのかぶを熱い煮汁に入れて開いた油揚げを落し蓋代わりに上にのせ、弱火で静かに10分ほど炊いたら火からおろす。そのまま20分以上味を含ませる。

3.かぶの葉のきんぴらを作る。葉を茹でて水に放す。冷めたら水をよく絞って細かく小口切りにして再度汁気を絞る。フライパンを火にかけ、ごま油をひいてかぶの葉を入れ、中火で炒める。調味料を加え一気に葉に絡めて、汁気がなくなってきたら一味唐辛子を加えて混ぜ、火からおろしてバットに広げる。むいたかぶの皮を細かく刻んで葉と一緒にきんぴらにしてもよい。

4.食用菊の花びらをガクから外し、酢(分量外)を少量入れた湯で茹でたら、冷水に放して水気をよく絞る。菊花の詳しい下処理は「菊花椀、菊梅雑炊」参照。菊花をボウルに入れ土佐酢をかけて混ぜる。漬け込むのではなく、土佐酢で洗う感じにして菊花の香りと食感を残す。土佐酢をきって両手で絞り、再度、土佐酢で洗うと水っぽさがなくなる。
5.味を含ませておいたかぶを温めて器に盛り、丸くかたどった葉のきんぴらと酢を絞った菊花を添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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