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ほろほろと柔らかいじゃがいも団子。繊細な口あたりを楽しんで

2021.10.20

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

じゃがいものすり団子汁


じゃがいものすり団子汁

じゃがいもは南米アンデス山脈原産のナス科の植物です。16世紀頃にヨーロッパに伝わり、その後、世界各地で親しまれるようになり、日本には16世紀末から17世紀の初めに伝わりました。オランダ商船によってジャカルタ(インドネシア)から渡来したため「じゃがたらいも」と呼ばれ、「じゃがいも」となりました。

じゃがいもとひと口にいっても、現在、日本で栽培されているものは50品種以上あり多種多彩。中でも「じゃがいもの蓑揚げ」で取り上げた男爵いもとメークインが有名ですが、他の品種も甘み、食感、煮くずれしやすいかどうかなどで使い分けます。


ちなみに男爵いもは、日本で初めてじゃがいも生産に取り組み、その生涯を北海道農業の近代化のために捧げた川田龍吉(りょうきち)男爵に由来するといいます。

じゃがいものすり団子汁左上から時計回りに、男爵いも、メークイン、インカのめざめ、シャドークイーン。

今日はそんな男爵いもを使ったすり団子汁を紹介します。北海道をはじめ、東北、九州など各地に同様の郷土料理があります。まるで白いマリモのような雰囲気で初めて見た方はこれ何からできているの?という反応です。プロの料理人でもどうやって作るのかすぐにはわからないかもしれません。技巧を凝らしたように見えて、実はシンプル極まりない料理です。

この料理はどのように生まれたのでしょうか? プロの発案ではないように感じます。片栗粉の原材料表示には、“ばれいしょでんぷん”と書いてありますね。じゃがいもをすりおろして布に包んで水の中でよくもみ、しばらくすると底にたまる白い粉が片栗粉です。この作業工程の途中で残りかすを再利用しようとした知恵者がいたのではないか? これが私の想像です(笑)。

フランス料理がそうであるように、日本料理も時々の最も栄えた都市に各地の優れた料理や技法が集まり、洗練、発展したものです。外(外国や目新しいもの)に求めなくても料理の知恵や工夫は自らの足元(地方料理、家庭料理)にある。そう心に刻み、今日は地方の野菜料理を楽しみます。


ちょっとしたコツ


・「じゃがいものすり団子汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎︎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・生地にでんぷんを加えるほど堅くなる。柔らかいほうがおいしいが、でんぷんが少な過ぎると茹でるときに崩れてしまうので、その加減が重要。

・生姜のみじん切りを生地に加えることで味がしまる。

・茹でるときは団子が浮き上がってくるまで触らない。途中で触ると湯の中で崩れてしまうことがある。

・ポテトチップスはその油分が味にボリュームをつけ、食感がアクセントになる。







「じゃがいものすり団子汁」


じゃがいものすり団子汁

【材料(3〜4人分)】
・男爵いも 2個(約500g)

・生姜(みじん切り) 15g

・昆布出汁 500cc
水500cc 昆布5g

・塩 少々

・水菜(三つ葉でもよい) 少々

・吸いもの出汁 500〜600cc
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油3cc、日本酒3cc

・インカのめざめ(果肉が黄橙のじゃがいも) 1個

・シャドークイーン(果肉が紫のじゃがいも) 1個

・揚げ油 適量

【作り方】
1.男爵いもは皮をむいておろし金でおろす。おろしたじゃがいもを布巾(ガーゼでもよい)に包み、耳たぶくらいの堅さになるまでボウルの上で水気を絞る。ボウルにたまった絞り汁をしばらくおいて、底に白いでんぷんが沈殿したら上澄みだけを捨てる。

2.絞ったじゃがいもを別のボウルに入れ塩少々で調味し、生姜のみじん切りを加える。1でできたでんぷんの2/3をじゃがいもに合わせてよく混ぜる。

3.鍋に昆布出汁を注ぎ火にかける。沸いたら吸いものの味くらいになるよう塩を加える。2の生地をスプーンですくって形を整え、昆布出汁の中に静かに入れる。弱火で静かに茹でて数分して浮いてきたら、穴あきおたまで優しくすくい上げ、表面のでんぷんを流すと同時に保温するため別のボウルに用意した湯に放す。

4.団子を作りながら吸いもの出汁を作る。先に団子を作り、冷めたものを温め直すと食感が微妙に変わるので、同時進行にする。

5.水菜は2.5cmくらいに切ってさっと茹で、水に放して水気を切る。インカのめざめとシャドークイーンは皮をむいて2mm弱にスライスして水に放し、表面のでんぷんを水で流す。クッキングペーパーで水分を除き、160℃くらいの油で揚げてポテトチップスを作る。

6.熱い団子を椀に盛り、水菜を添える。あつあつの吸いもの出汁を注ぎ、団子の上にポテトチップスをのせる。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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