女優・一色采子の「母のタンス、娘のセンス」〜睦月　その2

お正月の装いの小粋なパートナー

微に入り細に入りきもののお洒落を極めた母。季節や装いのシーンに合わせて帯留めのお洒落も楽しんでいました。お正月には、瓢や亀など縁起を担ぐ面々がコーディネートを一層楽しいものに仕上げてくれます。中央にある盃の下から顔を覗かせる「猩猩(しょうじょう)」は、お酒の神様。母が「お父さまがお酒が好きだから」と、嬉しそうに求めていた姿が思い出されます。


目上の方との会食や装いに気品をもたらしたいときには、帯に扇子をさすことも忘れません。赤富士は父の作品。武原はんさんの直筆が添えられた紅梅色の無地の扇子は、父の師匠である日本画家の山口蓬春先生の奥さまのお形見です。人目に触れない所にも、自分だけが感じる季節を潜ませることもきものの喜びではないでしょうか。