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秋真っ盛りならではのご馳走。それぞれに調味したきのこ料理を一皿に盛り合わせて

2021.10.13

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

きのこの富貴寄(ふきよ)せ


きのこの富貴寄(ふきよ)せ

今日は5種類のきのこをそれぞれに料理し、一つに盛った「きのこの富貴寄せ」を紹介します。秋に様々な木の葉が風で吹き寄せられて集まったさまに見立てたものを「吹き寄せ」と言いますね。「吹き寄せ」を「富貴寄せ」の語呂合わせで、めでたい文様として意匠化され、いろいろな伝統工芸にも取り入れられています。

日本で好んで食用に供されるきのこは70種類ほどだといわれますが、その中から菌床栽培され手に入れやすいきのこを集めて料理します。70種類といいましたが、日本に生育するきのこの数は4000~5000種だそうです。その中で名前のついているものが約2000種、さらに食用可能なものとなると約100種程度だといいます。


きのこの富貴寄(ふきよ)せ手前の小皿から時計回りに、なめこ、あわびたけ、ブラウンえのきたけ、えのきたけ、エリンギ、まいたけ、はなびらたけ、しめじ、しいたけ。

きのこは植物でも動物でもなく菌類という微生物で、地中に菌糸を張り巡らせ、地上に顔を出しているのは植物でいう花の部分のみ。菌類は物質を分解し土に還して養分をもらいつつ自然界と共生しています。きのこたち菌類のおかげで地球の循環システムができており、私たちはその恩恵にあずかっているのですね。

秋の夜長、きのこの不思議に思いを馳せつつ、きのこをおいしく料理して野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「きのこの富貴寄せ」は、全部で野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎︎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・弁当、おせちなどに限らず、いくつかの料理を一緒に盛り合わせる際は、五味・五色・五法(料理法)をなるべく多く加えるとよいという。特に今回のように同じ系統の食材の場合はなおさらで、飽きさせない工夫をして、味に変化を持たせる。







「きのこの富貴寄せ」


きのこの富貴寄(ふきよ)せ

【材料(3人分)】
・しいたけ(中) 6枚

・大根おろし 適量

・青ねぎ 少々

・ポン酢(市販品) 適量

・エリンギ 1/2パック

・サラダ油 少々

・濃口醤油 少々

・唐辛子味噌 少々

・あわびたけ 1/2パック

・すき焼き割り下 適量
出汁2:日本酒1:濃口醤油1:砂糖0.5の割合
※材料を鍋に入れてひと煮立ちしたら火からおろして冷ます。日持ちするのでまとめて作り冷蔵庫で保存する。日本酒を赤ワインに替えるとワインにも合うきのこ料理となる。

・穂じその炒り煮 少々「穂じその炒り煮(佃煮)」参照

・えのきたけ(根の部分) 2パック分

・薄力粉 適量

・サラダ油 適量

・バター(無塩) 5g

・濃口醤油 小さじ1/2強

・しば漬け 少々

・まいたけ 1パック

・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個

・揚げ油 適量

・塩 少々

【作り方】
1.しいたけは軸を切って除く。傘の表側に鹿の子に包丁目を入れ、裏返してひだ側の軸を取り除いたところにも鹿の子に包丁目を入れる。「焼き椎茸」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。予熱したグリラーで、ひだを上、傘を下にして焼く。逆にすると焼くときに出るしいたけのエキスがこぼれてしまう。大根おろしを絞ったものに、青ねぎを小口に刻んだものを少したたいて粗みじんにして合わせ、ポン酢で調味する。しいたけが焼き上がったら青ねぎ入りおろしポン酢をのせる。

2. エリンギは傘や軸の部分は柔らかく、根のほうは少し堅い。根のほうは輪切りにして焼くと帆立貝のような食感になる。2cm厚さ程度の輪切りにし耐熱皿に入れて500Wの電子レンジで1~2分加熱する。「エリンギ、赤ピーマン、オクラの味噌炒め」参照。根のほうだけでなく傘や軸のほうも使ってもよい。熱したフライパンに油をひきエリンギを入れて少し焦げ目がつくように両面焼く。焼けたら、濃口醤油数滴と唐辛子味噌(今回は麹で作った甘酒と唐辛子を合わせて作る山形県特産の甘辛い唐辛子味噌「ままけは」を使用)を加えて、辛みを生かした味にする。

3.あわびたけは一口大に切り、耐熱皿に入れて500Wの電子レンジで1~2分加熱する。熱したフライパンにサラダ油をひいてあわびたけを入れ、焦げ目がつくように両面焼く。サラダ油を牛脂に替えると味にボリュームが出る。すき焼きの割り下を好みの量加えて強火で一気に絡めて火から下ろし、穂じその炒り煮をアクセントにのせる。

4.えのきたけは根のほうを2cm厚さくらいに切る。バラバラになりそうな場合はたこ糸(調理用)などで縛っておくとよい。耐熱皿に入れて500Wの電子レンジで1分加熱する。水分を拭き取り、両側の断面に薄力粉をつけた後、熱したフライパンにサラダ油をひいた中に入れる。フライ返しで押さえながらきつね色に焦げ目がつくように両面を焼く。焼けてカリカリになったら、フライパンの中の余分な油をクッキングペーパーなどで拭き取る。そこにバターを入れて、バターの風味を両面にまとわせた後、醤油を垂らして全体になじませ火からおろす。みじん切りにしたしば漬けをのせる。

5.まいたけは一口大に切り、薄く薄力粉(分量外)をまぶし、天ぷらの衣をつけて170℃の油で揚げ、揚がったら塩をふる。

6.しいたけ、エリンギ、あわびたけ、えのきたけ、まいたけを一緒に器に盛って供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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