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秋を味わう一粒。大粒の黒ぶどう「オーロラブラック」の奥行きのある甘さを楽しむ

2021.08.17

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エッセイ連載「和菓子とわたし」


「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2021年9月号に掲載された第2回、華道「未生流笹岡」家元の笹岡隆甫さんによるエッセイをお楽しみください。


vol.2 被綿
文・笹岡隆甫



「今日は何?」「こぼれ萩!」
菓銘を教わってから口にする。曽祖母が裏千家の教授だったので、子供のころから、わが家の食卓には当たり前のように主菓子があった。幼いころは、華やかで色合いが美しい「きんとん」が好きだった。

「被綿(きせわた)」という言葉を初めて教わったのも、菓銘だった。菊を模(かたど)ったこなしに、真綿に見立てたそぼろを被(かぶ)せた美しい菓子。被綿は、菊の節句の習わしの一つで、九月九日重陽の前夜から菊の花に綿を被せておき、その菊の露を含んだ綿で身体を拭うと長寿を保つとされる。わが家の庭には菊の花が植えられていないので、菊のいけばなに綿を被せる。被綿の風習が残る家庭は今では少ないが、和菓子や日本料理の世界では、今でもそうした伝承を大切にする。

日本人は生活の中に四季を取り込む達人だ。夏座敷や薄物、単衣など、季節ごとに室礼(しつらい)や着物を変える。床の間には、季節にあわせた掛け軸を飾り、花をいける。中でも花は際立った存在だ。

人は花に様々な想いを託す。桜が散る季節には、散る花の霊にあおられて疫神がいたずらをしないようにと、各地の神社で花の霊を鎮める「鎮花祭(はなしずめのまつり)」が行われる。上巳の桃、端午の菖蒲など、節句には花の霊力を借りて身体の穢れを払い、無病息災を願う。和菓子の意匠に花が多いのも、単に美しいからではなく、人が花に託した願いを菓子に重ねたからだろう。

前家元であった祖父は、珈琲党だった。毎日、近くの喫茶店に足を運び、来客があると、必ず珈琲を出した。その名残で、今でも流派の教授者が集まる第一日曜日の研究会では、稽古が一段落すると皆で珈琲を飲む。「今日はどこのお菓子?」と盛り上がり、それまで張りつめていた教室の空気がふわっと緩む。

膝と膝をつき合わせて、美味しい菓子と一服の茶を楽しみ、花を愛でる。自粛期間中、そんな日常の幸せを、改めて教えられた気がする。一輪の花が心の支えになるように、甘い菓子は疲れた心を癒してくれる。

さあ、今日のお菓子は何だろう。

笹岡隆甫
華道「未生流笹岡」家元。3歳より祖父である2代家元・笹岡勲甫の指導を受け、2011年に3代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、海外の公式行事でもいけばなパフォーマンスを披露するなど、国際的に活躍。環境破壊防止を呼びかけるプロジェクト「DO YOU KYOTO?」大使としても活動する。

Information

宗家 源 吉兆庵

表示価格はすべて税込みです。
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