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ワインのおつまみにもぴったり。酸味を生かした極上のいちじくレシピ

2021.08.17

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ


いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ

野菜料理だけでなく、日本料理のさらなるおいしさを追求していく上で、これから重要なポイントの一つとなってくるのが酸味の上手な用い方です。実はこのことは「甘長唐辛子と牛蒡・パプリカのきんぴら」のちょっとしたコツのところでも既に述べておりました。

日本料理は他国の料理に比べて、酢や酸味については後れを取っており、その用い方に多様性がないという評があります。それは日本の伝統的な食文化や肉食の占める割合などによる影響もあるのですが。


確かに海外に比べると、日本料理の酢の種類や用い方のレパートリーは少なく、極論すれば酢のものなどに限られているともいえます。

フレンチのように酸味を隠し味的にわずかに加えると、味わいが複雑になります。味の輪郭がはっきりし、単調といわれる日本料理の味さばきにメリハリをつけることもできます。この野菜料理の連載でも、そのテクニックを随時紹介してまいります。

さて、今日はその手始めとして、甘みや香りが穏やかで酸味もないため、なんとなくボーッとした味のいちじくに、ほのかな酸味をまとわせて蜜煮にします。

それからもう一つ、買ってはみたものの、いまひとつ使い方がわからず、調味料棚の奥でほこりをかぶっているかもしれないバルサミコ酢の使い方の一例もご紹介します。

ヴィンテージもののバルサミコ酢はまろやかで、そのままなめてもおいしいですが、安価なものは……。煮つめて使うと角が取れ、酸味がまろやかになりますが、家中に酢の匂いが充満しとんでもないことに(笑)。

今回紹介する方法なら大丈夫。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素をクリア。

◎旨み 塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・先にレモンの風味と酸味を移した蜜を作り、蜜が沸いたところにいちじくを入れて急冷し食感を残す。

高温になったカラメルにバルサミコ酢を加えることで角が取れてまろやかに。濃度も自由自在。







「いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ」


いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ

「いちじくの蜜煮」
【材料(作りやすい分量)】
・いちじく 4個

・水 300cc

・グラニュー糖 270g

・レモンスライス 1/2個分

【作り方】
1.いちじくを湯むきする。「焼いちじくの田楽」参照

2.鍋に水とグラニュー糖を入れて火にかける。沸いたら、レモンを加えて火から下ろし、鍋のまま常温で冷まし、蜜にレモンの酸味と香りを移す。

3.鍋より一回り大きいボウルに氷水を用意する。

4.2の蜜に香りと酸味が移ったら、鍋を火にかける。沸いたらいちじくを丸ごと入れ、10秒炊いたら、鍋ごと3の氷水に浮かべて鍋を回して急冷する。冷めたら冷蔵庫で保存し味を含ませる。

※レモンの酸味と風味が加わり、おいしいいちじくの蜜煮に仕上がるが、バルサミコカラメルをかけるとさらにおいしい。

「バルサミコカラメル(写真右)」


【材料(作りやすい分量)】
・水 80cc

・グラニュー糖 80g

・バルサミコ酢 大さじ1

・レモン汁 小さじ2

【作り方】
1.少し大きめの鍋に水とグラニュー糖を入れて中火にかける。

2.沸いてきたら、鍋の内側についた蜜が焦げないように、水で濡らして軽く絞った刷毛で鍋肌をぬぐう。

3.温度と濃度が上がってくると、泡が段々小さくなってくる。通常のカラメルのように焦げの風味は必要としないので、鍋を揺すったり、かき混ぜたりしないで刷毛で鍋肌をぬぐいながら静かに見守る。

4.3がごく薄い黄色になった瞬間(プロセス写真参照)に鍋を火から下ろし、鍋底を濡れた布巾に当てたまま同時にバルサミコ酢を加え、鍋を揺する。続いてレモン汁を加え、鍋を揺すって全体が均一に混ざるようにする。

5.濃度を確認し、堅いようなら湯(材料外)を少量加えて緩める。

※バルサミコカラメルは、苺などのフルーツにかけても、スイーツのソースにしてもおいしい。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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