レシピ

ぬか床の手入れ

2017.08.16

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糠床の手入れ


1.糠床を入れた容器の底まで、手を入れ丁寧にかき混ぜ、新しい空気を送り込む。夏場は朝・昼・晩、冬でも朝・晩の2回は混ぜる。

2.使用するうちに、糠床が減ってきたら、糠(裏ごしで振るった新しいもの)と塩を足す。塩の量は、新たに糠と塩を加える前の糠床を口に含み、その塩加減を憶えておき、糠を加えた後に塩を加えて、前と同じ状態に加減にする。

3.糠床の水分が増え、ゆるくなってくると風味が落ち、空気の通りも悪くなるため、大事な菌が弱ってしまう。しかし、糠床を傾けて水分を捨てたり、タオルやスポンジ等で吸い取って捨てるのはもったいない。出た水分には、うま味も溶け込んでいるので、2のように、糠と塩を混ぜ補充するのが良策である。また、糠床に漬ける野菜は、塩をした後、水気をよく拭き取って床に入れ、床から出す時は、糠床の上で水分や糠を絞らないようにするのも、床をゆるくしないコツである。


4.糠床が酸っぱくなってしまうことがあるが、これは生酸菌によって酸ができ過ぎたのが原因である。糠床にとって有用な乳酸菌は10%の塩分の中でも活動できるので、根本的には塩を追加し、他の生酸菌の繁殖を抑える策を施すことになる。しかし、糠床が塩辛くなり過ぎ食味に影響が出ることもあるので、応急処置としては、アルカリ性である少量の重曹を加え中和するという手もある。また、昔からの手法で、卵の殻の内側の膜を取ってよく洗い、干したものをガーゼで包んで加えても効果がある。

5.糠床に、唐辛子や洋辛子を加えるのは、虫が湧かないようにするためであるが、それ以上に大切なことは、糠床の容器の内外を清潔に保ち、虫に卵などを産みつけられないようにすることである。唐辛子や洋辛子を入れ過ぎると糠床にとって有用な乳酸菌にも影響するので加える量に注意する。

6.糠床を混ぜるのを怠ると、その表面に白カビが発生することがある。糠床の中のうま味成分を栄養にどんどん増え、糠床の風味を損なってしまう。このカビは好気性なので、表面のカビを取り除き、後は床の中に混ぜ込めば死滅する。糠床の容器は、内壁もきれいな布巾で常に拭き、清潔を保つ。

7.糠床の温度管理も大切で、乳酸菌にとって、最も活動が活発になる温度は25~30℃で、40℃になると死滅するものも出てくるといわれる。料理屋の場合は若干低めの25℃前後で管理するのがよいと考える。店が休日の場合も、本来であれば、担当者が出て来て糠床を混ぜるか、持ち帰って管理するくらいの意気込みが欲しい所ではあるが、2日くらいなら野菜を取り出し容器ごと冷蔵庫で冬眠させるとよい。ただし、4~5日と長期に渡り、冷やし過ぎると乳酸菌が弱ってしまい、元に戻るのに時間がかかってしまうので注意。

糠漬のなぜ


「糠床はどうしてかき混ぜるのか?」

糠床に有用な微生物は主に乳酸菌であり、乳酸菌が酵母などと共に、糠床の酸味や風味を作っている。乳酸菌や酵母は半嫌気性菌と言い、空気があっても、無くても生存できる。糠床をかき混ぜないと悪臭がするようになるが、これは酪酸菌というバクテリアの仕業で、糠床の炭水化物を分解して異様な臭気を持った物質を作り出し繁殖していく。この酪酸菌は酸素に触れると数分間で死んでしまう極度の嫌気性菌で、糠床をかき混ぜるのは、床の中に新しい空気を入れ、酸素が嫌いな酪酸菌の繁殖を防ぐためである。先にも述べたが、糠床の水分が増えゆるくなると、かき混ぜても空気が入らないため、酪酸菌に好都合となるため、新しい糠と塩を加えて、適度な水分量を維持する必要があるのだ。

「茄子の糠漬けに古釘?ミョウバン?」

茄子を色よく漬けるために、昔から糠床にガーゼに包んだ古釘を入れたり、ミョウバンを茄子に擦り付けて床に漬けるということが行われてきた。茄子にはアントシアン系の色素でナスニンという色素が皮の部分にある。ナスニンは鉄やアルミニウムのイオンと結び付くと、色が鮮やかな紫色になる。その作用を利用して、古い鉄釘やミョウバンを用いるのである。古釘から出る鉄イオンやミョウバンのアルミニウムイオンが、ナスニンと結び付いて、色がきれいになる。

ただし、古釘は入れ過ぎると鉄臭さや錆び臭さがつくが味には影響はない。一方、ミョウバンは入れ過ぎると食味を悪くするので注意が必要である。

茄子の紫色を保たせるには新鮮なものを用いるのは言うまでもないが、さらには、皮に傷のないものを選ぶことが重要になってくる。それは、茄子の果肉自体にもともと酸化酵素が含まれるので、皮に傷があると、その酵素の酸がナスニンに作用し、色が褪せてしまうからである。また、茄子を糠床に漬ける場合は、ヘタも取らずに丸のまま漬けた方がよい。包丁して漬けると、切り口より果肉の酸化酵素が外に出てしまい、色が褪せる原因につながるからである。
同様に、ミョウバンを茄子の表皮に染み込ませようと塩を混ぜて擦り付ける料理人がいるが、狙った効果はあまり期待できない。塩を加えずミョウバンだけであれば、粒子が細かいので大丈夫だが、塩を加えることで、傷のない表皮に、塩の粗い粒子でわざわざ傷をつけていることになり逆効果である。
また、糠床が酸っぱ過ぎると、その酸のためにナスニンが変化して赤みを帯びてくるので、茄子を色良く漬けたい場合は、糠床に酸味が出過ぎないように調整する。
最後に、茄子は他の野菜を一緒に漬けると、他の野菜も黒くなってしまうので、茄子専用の床を用意して漬けた方がよい。

『日本料理の仕事大観』(榎園豊治 著 旭屋出版)より
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