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青春の“京都”再訪。佐渡裕さん 音楽のルーツへの旅。俵屋で振り返るバーンスタイン

2021.05.12

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学年劇を指揮して失っていたものと出会う


佐渡さんに案内されるままに歩いていくと程なく、よく行ったという喫茶店「ラ・ヴァチュール」に。

青春の京都再訪

佐渡さんが「ラ・ヴァチュール」を訪れるのはほぼ20年ぶり。大好きだったタルトタタン(右)を食べ、お店のかたとの話も弾む。


男子学生が駄弁(だべ)って過ごすようなお店かと思いきや、スイーツが銀器に盛られ、壁に絵の掛かるエレガントな空間。ここで何をして過ごしていたのですか?

「デートです(笑)」

思わず納得の回答ですが、かつては前が堀川高校の門だったといいます。

「先生たちは来てたでしょうね。でも高校生にとっては値段も高いし、『ラ・ヴァチュールに行った』とクラスメートに言うと『えーっ!』という感じでした。ここだけの話、当時のマスターには、なんでおまえら来たんだ?というような目で見られましたけれどね。でも、ここのタルトタタンが食べたくてよく来ました」と早速、コーヒーとタルトタタンを注文。

「いやー懐かしい」と満面の笑みです。食べるのはほぼ20年ぶりでしたが、お店のかたの話では、サイズも変わっていないそう。

フルートに明け暮れた高校時代。

「でも、憧れていたのは指揮者でした。学園祭で学年劇というのがあって、僕らの学年はミュージカルの『白雪姫と七人の小人たち』などをやったのですが、そこで僕が指揮をしたんですね」

青春の京都再訪

堀川高校時代、転機となった学年劇の練習風景。

一緒にやるのは音楽エリートの道を行く若き精鋭たち。クラスで結束して夏休みもずっと練習を重ね、そして学園祭の本番、大成功を収めます。

青春の京都再訪

ミュージカル『白雪姫と七人の小人たち』をやった仲間たち。

「それが僕の中でのものすごく大きな転機です。音楽をしているという実感があった。その達成感が、小学校で縦笛でタイガーマスクを吹いてみんなを喜ばせた時と繫がるものがあったんです。また中学の時にはハードロックにはまり、吹奏楽部の仲間とバンドを組んで、ディープパープルの『スモーク・オン・ザ・ウォーター』をやりました。そういう燃焼度の高さがフルートを吹いている時にはなかったんです。

中学・高校時代は、クラシック音楽に対するある種の反抗期だったと思います。子どもの時から音楽が大好きだというのは事実。でも一方でクラシック音楽が退屈と思う部分もあった。たとえば京都市交響楽団の会員に自分の意志でなって、オーケストラの音に心が震えることがあるわけですが、演奏会は何回もハズレがあるんですよ。だからクラシックのつまらなさもすごく知っている子どもでした。

そんな時、心を動かされたのが間違いなく自分で音をつくったその学年劇だったんです。本当に忘れられない経験で、当時の仲間はみんな同じことを言うと思います。それが一年生の時に起こったんです」

堀川高校で指揮者への思いがざわざわと蠢き始めた佐渡さんは、京都市立芸術大学へと進み、そして1987年に指揮者になるべくヨーロッパへと旅立ちます。
撮影/田口葉子 ヘア&メイク/渡部有紗〈市田美容室〉 撮影協力/俵屋旅館 ロームシアター京都 ラ・ヴァチュール 編集協力/三宅 暁
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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