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青春の“京都”再訪。佐渡裕さん 音楽のルーツへの旅。俵屋で振り返るバーンスタイン

2021.05.12

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京都会館で音楽を知り、堀川高校で指揮に目覚めた


美術館やコンサートホールなどが集まり、京都市内でも際立って文化的な地域・岡崎は、佐渡さんが堀川高校音楽科時代を過ごした場所。青春の日々を辿ります。

青春の京都再訪

ロームシアター京都のホールで新しくなったステージを見つめる佐渡さん。


「大文字はこんなに近かったかな」とロームシアター京都(旧京都会館)の前で山を見上げて佐渡さんがつぶやきました。

「少年合唱団の発表会も、堀川高校の演奏会も、吹奏楽コンクールの指揮者をしたのもここですね」

クラシック音楽の面白さに目覚めた小学校時代、京都市立堀川高等学校音楽科、京都市立芸術大学で学んだ青春時代、京都会館はいつも佐渡さんの音楽生活の中心にありました。

青春の京都再訪

旧京都会館の楽屋口では、好きなアーティストが出てくるのを待った。

現在は名称もロームシアター京都となり、館内は市民の憩いの場として無料で開放され、ホールも2階席から4階席の劇場型へと改築されています。佐渡さんが数々のオーケストラの演奏に耳を傾けてきたのも、もちろんこのホール。

「当時はあまり響きがよくなくてね」と新しいホールを見回す佐渡さん。

「でも本当にここは宝物でした。小学生の時、京都市交響楽団の定期会員になって、それから大学まで数えきれないくらい来ましたね」

高校生の時には建物内に忍び込んでつまみ出されたという有名な話も。

「1979年6月、高校3年の時にバーンスタインがニューヨークフィルと京都会館に来たんですね。でもチケットがすごく高くて買えない。どうしても聴きたくて友人たちと一緒に朝10時に忍び込んだんです。夜7時の開演まで隠れていようと」

青春の京都再訪

すぐ隣には京都市美術館別館。

それにしてもそんなふうに隠れる場所がどこにあったのですか?
「2階の非常口を出るとバルコニーがあるんですよ」とやんちゃな顔で答える佐渡さん。

結局その時は、友達がトイレに向かったところを館関係者に見つかって、こってり油を搾られて追い出されてしまうのですが、それでも外から扉の隙間に耳を当て、ロビーのスピーカーからハイドンやマーラーの音色を聴いていたという佐渡少年。そうまでして聴きたいという情熱があってこその今の佐渡さんの熱い演奏なのでしょう。

青春の京都再訪

外観は京都会館時とほとんど変わっていない。

そのロームシアターを出ると、目の前が疏水、佐渡さんが学生の頃何度となく歩いた道です。かつての京都会館のすぐ横に、佐渡さんが通った堀川高校(現在は移転)がありました。

堀川高等学校は、昭和23年に日本で最初の音楽科を持つ公立高校として開校。現在は音楽科が独立し、京都堀川音楽高等学校となっています。他府県から堀川に来る生徒も多いという名門校で、1学年がわずか40名ほど。

青春の京都再訪

ロームシアター京都前の疏水にて。当時の堀川高校はこのすぐ近くにあり、学校帰りには八坂神社のほうへ足を延ばしたりもした。

「英語や国語、体育などもありましたが、明らかに音楽家になるためという専門学校のムードがありました。才能ある子たちが集まって、個性的な子も多く、本当に不思議な学校でしたね。進駐軍が使っていた建物が校舎で、京都芸大が同じ敷地にありました」

佐渡さんはこの学校でフルートのレッスン、オーケストラや合唱、ソルフェージュなどの授業を受けます。

「高校の時はとにかくフルートに夢中で、フルートばかり吹いてましたね。学校が終わったら個人レッスンを受けたり、グラウンドでフルート練習したりとか、京都芸大の大学生と一緒に吹いたりもしていました」

その頃佐渡さんが追っかけをしていたフルートのアイドルが英国のフルート奏者・ジェームズ・ゴールウェイ。

「楽器の鳴り方が圧倒的に違うんですよ。京都会館で聴いているのに、草原のなかで草笛を聴いているような気がするんです」
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