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環境の変化は成長のチャンス。マインドフルネスで“ぶれない心”を育みましょう【前編】

2021.05.13

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川野医師の診察室から


*実際の症例をもとに内容を変更して掲載しています。

【ケース・1】
仕事量が増えたストレスをテンションの高さでカバー。やがて不眠と食欲不振が



→「グラウンディング瞑想」でせわしない心が落ち着き、無理をしていたと気づいた

パート先の新しい上司に頼りにされ、「仕事量が急に増えたけれど頑張っています。ただ、寝つきが悪く熟睡できません」と話すA子さん(51歳)。食欲も落ち、休日も出かける気がしないといいながら終始ハイテンションで、「無理をされていませんか」と尋ねても「いいえ、私は元気です。睡眠薬さえあれば大丈夫」と明るく応じます。

しかし2か月ほどたつと、仕事に行けなくなってしまいました。まずはしばらく休職し、体の疲労が取れてきたところで瞑想を始めました。気持ちがせわしなく落ち着かないA子さんにすすめたのは、地面にしっかり立っている感覚に注意を向ける「グラウンディング瞑想」(後編でご紹介)です。

約1か月後、A子さんは診察室で「自分が無理をしていたことにやっと気がつきました」と、涙を見せました。元気に振る舞ってきたのはまさに、高いテンションでストレスを乗り越えようとする躁的防衛だったのです。

以前から興味のあったウェブデザインの勉強を始めたところ、高校生の息子さんに「最近のお母さんは楽しそうだね」といわれたそうです。家族もA子さんの変化に気づいていました。




【ケース・2】
新学期のクラス替えから毎朝、原因不明の腹痛が。登校できなくなった小学生


→母親と一緒に呼吸瞑想。気持ちを言語化することを覚え、親子の会話も増えた

小学4年生のB子さん(9歳)は、4月に入って間もなく、腹痛で登校できなくなりました。内科の検査でも異常はなく心理的要因が考えられましたが、口数が少なく手がかりがありません。

子ども向け呼吸瞑想(後編でご紹介)をお教えし、お母さんと一緒に朝晩5分ずつ始めて2週間後、B子さんが「緊張する」と母親に打ち明けました。クラス替えや通い始めた塾など環境の変化にとまどいながら"おなかのもやもや"としか認識できなかった不安を、初めて言葉で表現できたのです。

腹痛の原因は忙しい両親を困らせまいと無理をしていたことだと気がついたお母さんは、夕食後の10分間、B子さんの話に耳を傾ける時間を持つようにしました。思いを言葉で伝えることを学んだB子さんは、その後は体に症状が出ることもなくなりました。




川野泰周(かわの・たいしゅう)さん


臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となる。寺務と精神科診療の傍ら、講演活動などを通してマインドフルネスの普及と発展に力を注いでいる。著書に『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)ほか。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/
取材・文/浅原須美 撮影(川野さん)/鍋島徳恭

『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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