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[福井県]“礼節の国”の源を訪ねて。ゴディバ ジャパン代表取締役社長ジェローム・シュシャン氏と禅の里、永平寺へ

2021.03.29

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福井県で連綿と受け継がれてきた
「礼節」と「ZEN」について語らう




南澤道人貫首(みなみさわ・どうにん)
大本山永平寺第80世貫首。1927年長野県生まれ。駒澤大学専門部仏教科卒業。1949年、永平寺僧堂に安居(あんご)。1982年よりフランスの禅センター・禅道尼苑などで禅の指導にあたる。2004年札幌中央寺住職を務め、永平寺では、副監院、監院、副貫首を経て、2020年9月永平寺貫首に就任。

東京からヒッチハイクで、憧れの永平寺へ


ジェローム・シュシャン氏(以下、シュシャン) 学生の頃、書物で読んだ禅に興味があって、日本に来ました。東京からヒッチハイクで行こうと「福井」と書いた大きい看板を持って立っていたとき、停まってくれたのがラリードライバーの菅原義正さん。

永平寺に着き、修行したいと申し込んだら、「3週間前までに予約しないとできない」といわれて途方に暮れました。またヒッチハイクで帰ろうとしたら、たまたま曹洞宗天龍寺の笹川浩仙住職の車が停まり、そのまま天龍寺で宿泊と修行をさせていただきました。

永平寺への紹介状も書いていただき、それを持参すると、永平寺での参禅が実現しました。

久方ぶりに訪れましたが、山の奥の大自然の中に佇む寺というのが素晴らしいですね。建物すべてが木造というのも心が穏やかになります。



ジェローム・シュシャン氏
1961年フランス・パリ生まれ。2010年よりゴディバ ジャパン代表取締役社長を務める。29歳で始めた弓道の精神をビジネスにも生かし『ターゲット ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?』、『働くことを楽しもう。ゴディバ ジャパン社長の成功術』を執筆。弓道五段錬士。経済同友会の会員、在日ベルギー・ルクセンブルク商工会議所、フランス商工会議所の各理事を務める。

小林昌道監院(以下、小林) 道元禅師は、環境が人を育てる、環境こそが大事と説いておられます。なぜ京都の大都会から、越前の山奥に移られたのか。修行の地にふさわしいこの静かな環境を選ばれたのだと思います。



小林昌道監院(こばやし・しょうどう)
大本山永平寺監院。1963年群馬県生まれ。2006年永平寺の受処主事に就任し、 参務、尚事、副監院を経て2016年より現職。禅の修行道場継承のための「禅の里」事業推進にも取り組む。

シュシャン 初来日時、たくさんのかたの手助け、親切心によって永平寺まで辿り着くことができました。その出会った人々から日本人の優しさ、奥ゆかしさを知り、ここは「礼節の国」と強く感じました。

この出来事を思い返し、昨年(2020年)、「礼節の国・日本 #負けないで」というメッセージ広告も出させていただきました。

杉本達治氏(以下、杉本) 私は、福井県出身ではないのですが、こちらに住んでみて、福井の人は、とても先祖を大切にし、礼儀正しく、目上の人を尊ぶなど「礼節の国・日本」を代表するような県民性ではないかと感じています。

これは、子どもたちが小さい頃から祖父母や父母からしっかりと躾けられている。小学校に上がったら、先生の話をしっかり聞くという心構えが備わっている。そして先生を大切にする。こうした姿勢が脈々と受け継がれ、礼節を重んじる県民性へと通じているのではないかと考えています。



杉本達治氏(すぎもと・たつじ)
第54代福井県知事。1962年岐阜県生まれ。祖父が福井県大野市出身。東京大学法学部卒業後、旧自治省に入省。2004年福井県総務部長として赴任し、副知事を経て2019年より現職。

ただひたすらに坐禅に打ち込む。調理・食事も重要な修行


シュシャン 禅に興味を持ったのは、まずは身体を修練するという教えから。キリスト教には存在しない考えだったからです。修行の根本は坐禅。何も求めずただひたすらに坐る行為を日々行うことで、身体・呼吸・心が整えられる。それら3つは一体という考えがとても斬新でした。

小林 永平寺の時間の流れは、夜の坐禅から始まります。寝ている間も修行ととらえるので、夜の坐禅を行うことで一度原点に戻り、そこからまた一日を繰り返していきます。そして、坐禅は形から入ります。「調身、調息、調心」といわれますが、形を整え、次に呼吸を整える。

そして深い呼吸をすると心が整います。昨今の状況では、マスクをしているとどうしても呼吸が浅くなります。深い呼吸をすると免疫力が高まるとお医者さんも言っておりますので、坐禅は、身体を整えるのにとてもよいことがわかります。

杉本 ある意味、わかりやすい教えかもしれませんね。精神性から理解しなければいけないとなると難しいですが、まずは、坐禅という決まった形から始めなさいというのは、海外のかたにも理解しやすいのではないでしょうか。

小林 禅宗では、掃除や洗濯などの労働を作務と呼びますが、それらも含め日常行為すべてが修行です。なかでも、人間が生きていくうえで欠かせない調理と食事については、とても重要な修行ととらえられています。典座が一切を任され、日々の精進料理を調えています。

シュシャン 肉や魚を用いない精進料理は、ビーガンフードとして、世界からも注目度が高いです。名物のごま豆腐も、ごまを丁寧にすり鉢ですりつぶすところから始まる。この手間を惜しまず、修行僧が真心を込めて作る精進料理は、今後も多くの可能性を秘めていると感じます。


滋味深い煮物、ごま豆腐、細工昆布を素揚げした吉祥昆布など、典座が真心を込めて調理した、おもてなし用の精進料理「戒号膳」。

取り戻すべき日本の心が今なお多く残る福井県


シュシャン 日本全体で職人さんが減っているようですが、食べ物、工芸品など福井には昔からの手仕事のものがまだたくさん残っているようですね。

杉本 伝統工芸の越前和紙、越前漆器、越前打刃物など大変長い歴史があり、これらは今も手作業で作られています。

小林 永平寺で使われている漆器も昔ながらの手仕事のものです。修行者を育てていくには、やはり本物を使うべきと考えます。高価なものを高価と認識しながら大切に使うことが大事です。

また、先だっての広告でシュシャンさんが「日本の心を取り戻せ」とおっしゃっていましたが、特に福井は、日本の昔からの宗教文化が色濃く根づいた地域でその取り戻すべき日本の心がたくさん残っていると感じます。

杉本 以前、シュシャンさんのテレビ番組の特集を見ましたが、弓道を通じて、本当によく日本人の心を理解されている。むしろ我々が教えられているような気がしました。

永平寺は、福井県が生まれる前からこの地にあり、その禅の心は、世界で「ZEN」として多くの人の心を惹きつけている。今回改めて福井の人々が連綿とつないできた礼節、禅の心というものを見つめ直すことができました。感謝いたします。

シュシャン 改めて日本、そして「礼節の国」といわれる福井県の素晴らしさを知ることができました。これからもこのご縁を大切に、さまざまな展開につなげられたら嬉しいです。



斜面の最も高いところに位置し、380畳敷の大伽藍が圧巻の法堂(はっとう)。さまざまな法要儀式や朝の勤行が行われる。中央に本尊の聖観世音菩薩、左右に阿吽の白獅子を配す。

●お問い合わせ
福井県ブランド課
電話 0776-20-0762
公益社団法人 福井県観光連盟
URL:https://www.fuku-e.com/

ゴディバ ジャパン株式会社
URL:https://www.godiva.co.jp
撮影/シンヤシゲカズ 取材・文/直江磨美 撮影協力/大本山永平寺
『家庭画報』2021年05月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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