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数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

2021.04.02

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この度世界文化社から刊行された『数寄の真髄』では、独創的なテーマのもと、濃茶、薄茶、煎茶の垣根を超えて、それらを自在に組み合わせた個性的な茶の饗応が展開されます。床の書画や花は、いずれ劣らぬ名品揃いで、亭主が企てた茶事のドラマへと誘います。

「洞庭湖」の茶事


数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

茶室萱庵小間の濃茶では、佃 一輝さんが亭主で、潮田洋一郎さんが客。

遠州尺八竹花入 銘 深山木
解縉(かいしん)筆 狂草 唐詩 崔珏(さいかく) 洞庭湖七言律詩2首



「洞庭湖」は、寄付、煎茶席、濃茶席という流れで組まれています。

中国湖南省にある洞庭湖は、日本一大きい琵琶湖の4倍もあり、かつては中国で最大の湖でした。沿岸は風光明媚で変化に富み、瀟湘八景と呼ばれて中国山水画の伝統的画題であり、多くの詩人たちが漢詩に詠み讃えてきました。

寄付はロータスハウスの屋上。

湖の中に座しているかのような始まりで、洞庭湖へと誘われます。煎茶席は1階のテラスに設けられ、亭主と客が玉露を味わいながら湖へと思いを馳せます。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

中国の洞庭湖がテーマの茶事では、葉山にある旧畠山一清(即翁)別荘内に新築された隈 研吾設計のロータスハウスの月見台が寄付という斬新さ。屋上の水盤を洞庭湖に見立てている。

煎茶席の掛け物は、解縉(1369~1415年)という中国明代初期の政治家であり文学者であった人の書です。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

煎茶席は、蓮池に面したテラスにインドネシア産チーク材の大きなテーブルを置いて設けられた。解縉の一幅はかなり大きいが、トラバーチンの大理石の壁面で堂々とした存在感を放っている。亭主は潮田さん(左)、客は佃さん。

永楽帝(在位1403~1424年)の時代に、本文だけで2万巻という中国最大の事典『永楽大典』の編纂をした解縉は、永楽帝に近侍する臣下でしたが、政策に反対を唱えたことから晩年、獄につながれます。この書は、追放された辺地で刑を待つ身のときに筆を走らせたものです。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

解縉筆 狂草。中国書道史上に残る傑作とされる書で、元代の読むことを目的とした硬い書の表現から脱して、より美学的情緒的な新しい書の表現を打ち出したとされる。

くるくるとした前衛絵画を思わせるその書風は狂草と呼ばれる草書で、中国書道史に新風を吹き込みました。書いてあるのは、晩唐の詩人、崔珏が詠んだ洞庭湖。

紀元前には、屈原がやはり政策に異を唱え入水自殺をしたと伝えられます。そんな屈原を偲びながら、夕暮れの湖の哀しみを詠います。狂草の文字からは、哀切に満ちた解縉の叫びが聞こえてくるような気がしませんか。

一転して小間での濃茶の床には、遠州の竹花入「深山木」が掛かっています。

入れられたのは夕顔。あたかも洞庭湖の沿岸の山へ分け入ったかのような場の転換。床の「深山木」が静かに招くように、濃茶のもてなしへと移ります。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

小間の床の間に掛けられた花入は、遠州尺八竹花入。片身替わりの景色で竹の美しさが抜きんでており、遠州の花入の筆頭とされる。「深山木」という銘が、客を洞庭湖から山間へと誘っているかのような趣を伝える。花は夕顔。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

煎茶道具は、解縉が生きた明代の名品が中心。湯を沸かす白泥涼炉は、「引道清風」という銘で、心地よい風に乗り動き回るという意味。玉露を淹れるのは、手前の存星の漆盆に載せた茶銚。三大茶銚の一つ、すこぶる稀少な倶輪珠。
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