熟年男女の本音と建前を描いた人間喜劇―豊川悦司

どこまでが本気、どこからが冗談? その境界が曖昧ゆえの、関西弁の魅力

主役から脇役まで、個性豊かなキャストが丁々発止でやり合いながら、テンポよくドラマが展開する本作の大きなスパイスになっているのが関西弁だ。

「僕の個人的な感覚でいうと、関西弁は、どこまでが本気でどこからが冗談か、曖昧なところがあって、柏木と小夜子の会話も、観ている人の想像力を膨らませてくれます。標準語でいうときつくなることも、関西弁でいうと柔らかくなるので、そのあたりも、この作品の毒気を、笑いのオブラートで包んで見せる仕掛けになっている気がしますね」と、豊川さん。

今回の映画は座って話すシーンが多かったこともあり、“観る人を、セリフのリズムやおもしろさで引きつけることができればと、小夜子との会話に夫婦漫才のようなニュアンスや間合いが出るように、昔の上方漫才をずいぶん聞いていました”とのことだが、ポンポンと交わされる関西弁のセリフの力は、本作のもう一つの顔ともいえるだろう。

社会構造の変化に伴い、家族観も価値観も多様化の一途を辿っている――そんな時代の趨勢を反映した熟年婚活ブームから垣間見える、愛とお金にまつわる独身熟年男女の本音を笑いと愛と毒の絶妙なバランスで描いた『後妻業の女』。夫婦や親子の関係を振り返るきっかけも与えてくれる本作だが、豊川さん自身は、夫婦についてどう考えているのだろう。

「独り暮らしでも、いろいろ楽しいことはあるでしょうけれど、僕自身は独りよりも、ふたりでいるのがいいと思いますね。平均寿命が延びても、ゴールの差はどうしても出てしまうし、やはり人との出会いは人生を豊かにしてくれるものなので、結婚というかたちにこだわらなくても、パートナーを持つことは大事だと思っています」


取材・構成・文/塚田恭子 撮影/寺澤太郎 ヘア&メイク/山﨑 聡〈シルフ〉 スタイリング/長瀬哲朗〈UM〉

160810_ac_06.jpg ©2016「後妻業の女」製作委員会

『後妻業の女』
監督・脚本/鶴橋康夫 原作/黒川博行(『後妻業』/文春文庫刊) 
出演/大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、余 貴美子、笑福亭鶴瓶、津川雅彦、永瀬正敏ほか
2016年 日本映画 128分 8月27日より、全国東宝系にてロードショー

●『家庭画報』2016年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。


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