熟年男女の本音と建前を描いた人間喜劇―豊川悦司

世間的な尺度で見れば、他人を騙している柏木と小夜子。だが、見ていて憎めないのは、豊川さん、大竹さんの演技力と、騙すほうが悪い/騙されるほうが悪いという単純な判断をせず、それぞれの感情に目を向けた監督の演出力によるのだろう。

「多分、人は、欲深さを隠している人に対してより、自分の欲を堂々とむき出しにしている人に対してのほうが“しょうがないなあ”と、寛容になれるのかもしれませんね。老人たちにしても、騙されたかもしれないけれど、小夜子と一緒にいて楽しかったという気持ちはあったはずだし。ある人にとっての善が、別の人にとっての悪になり、またその逆も起こり得る。特に高齢者をめぐる話は、本人はそれでいいと思っていても、周囲がそれはだめだと一方的に決めつけることも少なくありません。小夜子の九番目の夫、津川雅彦さんが演じた中瀬一家のエピソードは、親子といえども互いを思う気持ちには、温度差や解釈の違いがあることを伝えていると思います」

160810_ac_05.jpg 夫の預金4000万円を引き出すことに成功して、ベンチで一息つくふたり。真夏の撮影の一コマ。

160810_ac_04.jpg 元刑事、今は裏社会で動く正体不明の探偵を演じる永瀬正敏さんとは、 実は初共演。

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