お医者さまの取扱説明書 総合内科医の尾藤誠司先生に、患者と医師の良好コミュニケーション術を教わります。
記事一覧はこちら>> 体の不調が続いているけれど、検査をしても異常は見つからず、通院してもなかなかよくならない─。このような状況に戸惑っているのは患者だけかと思いきや、医師も同じだと尾藤先生はいいます。
問題解決に必要なのは、セルフケアと医療の二人三脚。“具合の悪さ”は、医師まかせでは解決しないのです。
尾藤誠司先生独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研修科医長・臨床疫学研究室長
病気といえない体の不調に、医師も感じている後ろめたさ
頭痛が続いている、すぐに下痢をする、喉に何かがつかえている感じがする、顔がピクピクする、耳鳴りがやまない……私たちはしばしば体の不調に見舞われます。
そして病院を受診してもはっきりした病名がつかず、このような具合の悪さが一向によくならないこともたびたび経験しています。
患者にとって納得しがたいこの状況を、医師はどうとらえているのでしょうか。
「医師は医師で患者さんに対して後ろめたさを感じています」と尾藤誠司先生はいいます。
「医師は、患者さんの具合の悪さは何らかの病気が原因であるとの前提でことを進め、さまざまな検査を行います。しかし、数値にも画像にも病気の根拠となる異常が表れないケースは決して少なくありません。
となると医師の理屈では病気とはいえず、したがって有効な治療法も提示できない─。患者さんのつらい症状を解消できない状況に対して、医師は後ろめたく思うのです」。
このとき、患者が症状のつらさばかりを訴え続けると、さほど効き目のない薬が増えていくだけという非常に好ましくない方向に進みかねません。
医師が病気と診断できない具合の悪さが医師まかせで治ることはなく、セルフケアと医療の両面から取り組む意識を持つことが必要です。