分類した夏きもので、いざお出かけ
「この紬は、母がよく袖を通していました。納戸の奥から引っ張り出し、私が着ることで日の目を見ました」。自分で誂えたものならいざしらず、お母様の箪笥ともなると、きもの揃えの全容がわからないものです。そこで、まずは一枚一枚を畳紙から取り出し、畳紙のメモも一緒に撮影。袷や単衣、盛夏、染めと織り、訪問着に小紋など、きもの暦に合わせてジャンルごとに分類しました。
お母様の着姿を思い出しながら、「この大島紬には、こんな帯を合わせても面白いわね」「涼しげな上布! どこへ行こうかしら」と、コーディネートやお出かけのイメージを膨らませる阿川さん。
仕分けを済ませた数週間後、「先日ね、早速仕分けファイルを見ながら、単衣の紬に付け帯を合わせて食事に出かけたのよ」と嬉しいご報告も。ワードローブが明確になることで、きものを着る意欲も増したご様子。
そして、この夏は奥州紬にマルチカラーの半幅帯をしっとりと着こなして。浴衣以上、きもの未満の大人の納涼スタイルを楽しまれたようです。
茶箱やダンボールから取り出したきものや帯を、アイテムごとに分類してファイリング。こうしておけば、阿川さんの“お出かけ心”もいっそう高まります。
古い畳紙には、メモ書きに加え余り裂を使ってこんな遊び心ある演出も。きものと大切に過ごしてきたお母様の姿が伺えます。
阿川佐和子(あがわ・さわこ)
©Akinori Ito作家・エッセイスト 1953年東京生まれ。大学卒業後、テレビ番組でのリポーターを機に、報道番組でのキャスターや司会を務める。映画やドラマに出演するなど女優としても活躍。『週刊文春』(文藝春秋)では対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」を、『婦人公論』(中央公論新社)、『波』(新潮社)他では多くのエッセイを連載。テレビ朝日系列『ビートたけしのTVタックル』にレギュラー出演中。『母の味、だいたい伝授』(新潮社)他、著書多数。