約1年半の休養期間を経て、2020年2月にシスティーナ歌舞伎『NOBUNAGA』で活動を再開した今井さん。「仕事ができる喜びを、改めて感じています」《裸のマハ》などの作品で知られるスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤを題材にしたオリジナルミュージカルが、4月に初日を迎えます。ゴヤを演じるのは、これが復帰後の初主演作となる今井 翼さん。作品に懸ける思いなどを伺いました。
――封建的な貴族社会が大きく揺れ動く18世紀から19世紀のスペインが舞台の本作品。スペイン通で知られる今井さんにぴったりの作品ですね。「そう言っていただいて嬉しいです。ゴヤを題材にしたいというのは、(原案・脚本・作詞の)G2さんの念願だったそうなんです。そのゴヤを、僕がこのタイミングでやらせていただけるというのも、ひとつのご縁だと思っています。ゴヤというと、晩年に描かれた《黒い絵》シリーズといわれる暗い絵の印象が強いかもしれませんが、ミュージカルというエンターテインメントならではの高揚感がありますし、コミカルな場面もたくさんあって、作品としてはカラフルなものになっています。ゴヤや美術のことをよく知らない方も、楽しめると思います」
――今井さんご自身は、以前からゴヤについてよくご存じだったのですか?「いえ、もちろん存在は知っていましたが、詳しくは知らなかったので、今回お話をいただいてから資料を集めて勉強しました。自分でゴヤの年表を作ったりするなかで、ヨーロッパ全体が大きく変わっていった時代に、我が道を進んだ熱い魂には共感を覚えました。しかも、欲しかった地位をやっと手に入れた矢先、病で聴力を失ってしまう……。そんな人生を送ったゴヤだからこそ、ものすごくきれいな絵も描けば、《黒い絵》のようなものも描けたんだろうなと思います。ゴヤが残したものが、スペインを代表する芸術として今も語り継がれていることを胸に演じたいと思っています」